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一緒に走ったり、試乗させていただいた車や、プロデュースさせていただいた車を紹介

また長年走ってきた経験から、ムラポの持論も公開している

    AMG A45 エディション1

2015年11月末日

AMGといえば、大排気量のハイパワーエンジンを搭載した重量級の車で、真っ直ぐは速いがコーナリングはあまり得意ではない、どちらかというと私があまり好みではない車というイメージである。

そんなAMGが初めて作ったコンパクトスポーツカーがA45 AMGであり、以前から乗ってみたいと思っていた。

A45と言えば「小さくて速いハッチバックでしょ」と言われるのだが、今回乗ったのはその中でもフロントにはカナード風のスポイラー、リアにはGTウイング風のスポイラーを装備したエディション1という限定車である。

見た目にもスポーツカーの雰囲気がプンプンなのだが、
どのくらい速いのか?
コーナーリングはどうなのか?
ハンドリングやブレーキングはどうなのか?

今回全開で走らせてみたので、ハイパワー4WDのGRBインプレッサSTIやFFのプジョーRCZ Rと比べてどうなのか、そのインプレッションを書いてみることにした。

まずシートに座ってみて驚いたのが、エディション1に標準装着されているレカロのホールド性とポジションである。
前後上下、背もたれ角度はもちろんだが、サイドサポートまで両ワキと両モモを電動で締め付けてくれる。
またポジションは3パターンまでメモリーが可能でヒーターまで備える。
リクライニングするセミバケットシートで、フルバケットシートの必要性を感じなかったのは初めてである。

レザーとアルカンターラの高級感溢れるステアリングをチルトとテレスコ機能で調整し、シートベルトを装着するとそのシートベルトまでもが電動で締め付け具合を調整してくれる。

イグニションキーをひねってエンジンをスタートさせると「バウーン!ポロポロ・・・」と勇ましい排気音が響きわたる。
私好みの排気音である。

インパネに目をやるとスピードメーターとタコメーター間のモニターにシフトポジションと水温の表示がされるのだが、水温以外に油温とトランスミッションの油温まで表示される。

水温が70℃になったところで、シフトをDに入れてアクセルを踏むと、サイドブレーキが自動で解除されAMGスピードシフトと呼ばれるDCTは、3ペダルのクラッチミートと同じフィーリングで動き出す。

ギアはすぐに2→3→4とシフトアップされ2,000rpm以上回ることなくスムーズに加速し、街中では2,500rpmも回せば、たいていの車を置き去りにできる。

サスペンションはかなり硬く上下に揺さぶられることが多いが不快な感じはない。

そのままいつものように小田原厚木道路に乗り、シフトをSモードにしてアクセルを床まで踏み込んでみる。
すると噂通りの強烈なダッシュが始まり、人間業ではとうてい敵わない電光石火の早業でシフトアップされ、みるみる速度が上がっていく。
シフトアップの度に「バフッ!」とけたたましいエキゾーストノートが聞こえ気持ちが良い。

ただGRBインプレッサのようなシートに押し付けられる爆発的な加速ではなく、大排気量車のようにフラットに伸びていく加速であるため、刺激的でスリリングだとはいいにくい。

ここでは書けない速度域まで引っ張ってみたのだが、私が所有しているどの車よりも安定感があり、真っ直ぐ走るのである。
しかも街乗りではゴツゴツ硬いと感じていたサスペンションは、どんどんフラットになり路面のうねりもしっとりとこなすため、恐怖感がないのだ。

高速域でのこの乗り味は小さくてもまさにAMGそのものである。

そのまま小田原厚木道路を下り、箱根ターンパイクに入る。
料金所を過ぎると、急な上り坂になるのだが、上りを感じさせない勢いで加速していく。
軽くブレーキを残し、左に右にコーナーリングしていくが、路面のうねりでもぴたっと安定して気持ちが良い。
箱根ターンパイクのような高速コースでの上りだと、GRBインプレッサより速いかもしれない。

その後ターンパイクを抜け十国峠に入る。
今度は低速コーナーの連続で左右にがんがん切り返して行くコースであるため、シフトをMモードにしてパドルシフトを使ってみることにする。

ところがパドルシフトに慣れていないため、上手く使いこなせないのである。
コーナーリング中のステアリング操作で、無意識のうちに握り替えてしまうため、パドルの位置を見失ってしまうのである。
それに加えモニターに表示されるシフトポジションとエンジン回転数の確認をしながら、操作しなければならないため、シフトアップやダウンが遅れてしまいリズム良く走れないのである。
これは私のドライブテクニックの未熟さが原因なのだが、3ペダル車よりも2ペダル車の方が難しいと初めて感じてしまった(笑)
結局、Mモードは諦めてSモードに切り換えて走ることにした。
Mモードを使いこなすのは今後の大きな課題である。

話が反れてしまったが、低速コーナーではアンダー傾向が強く、上手く向きが変わらないのである。
ブレーキとアクセルコントロールで、向きを変えるきっかけを作ろうとしてみるが、向きが変わった時点では予想以上に失速してしまう。

どうやらESPが介入しすぎているようである。
そこでESPをオフのしようとスイッチを押してみた。
するとモニターにはOFFではなく、スポーツハンドリングの表示が・・・
実はこの時点まで、スポーツハンドリングモードがあることを知らなかったのだ(笑)

A45のEPSには3モードの設定があるようで、通常モードからスイッチを押すとスポーツハンドリングモード、長押しすることによってオフになる。

スポーツハンドリングモードにしてからは、アンダー傾向が弱まり、ブレーキで向きを変えやすくなったので、納得のいくペースで走れるようになった。
ただどこまで追い込んでも、アンダー傾向が強くリアが終始安定しているため、オーバーステアぎみに向きを変えることはできない。

A45の4MATICシステムは常時4輪が駆動しているのではなく、通常はフロント2輪のみ駆動していて、1輪でも滑ると最大50%までリアが駆動するシステムである。

そのためGRBインプレサのような、常時4輪が駆動していて滑り方に応じてリアに最大59%も駆動がかかる車のようにアクセルコントロールで向きを変えるような芸当はできないし、フロント駆動車であるプジョーRCZ Rのような軽快で素早いターインは望めない。

コーナー進入ではオーバースピードにならないよう早めに向きを変え、エンジンパワーを有効に使って加速する走り方が合っているのだろう。

そして最後に伊豆スカイラインを走ってみたのだが、ここは短いストレートと中速コーナーが続くシュチュエーションが多く、フル加速→フルブレーキ→コーナリング→フル加速を繰り返すため、A45の性能をフルに引き出すにはベストなコースである。

フル加速時とシフトアップ、ダウン時に聞こえる排気音があまりに心地良いため、調子にのって攻め込んでみたのだが、終点近くでブレーキが音を上げてしまった(笑)

ただキャリパーとディスクローターの容量は問題ないと思われるので、これは温度域の高いスポーツパッドに交換すれば改善されるだろう。

今回、さまざまなコースでそれぞれの走り方を追求してみたのだが、A45は私がイメージするAMGが作ったコンパクトスポーツカーそのものであった。

これまでエコノミーなスポーツカーばかり乗り継いできた私には、さすがAMGだと感動することばかりでお腹いっぱいになってしまった(笑)

ほんとに素晴らしい車である。

2013年にA45 AMGの発売記念モデルとしてデビューしたエディション1だが、日本ではホワイト400台、ブラック200台が限定で販売された。
ボディサイズは4,355×1,780×1,420mm、車重は1,560kgとなるが、AMGシリーズの中では最も小さく軽量であるため、一度乗ってみたいと思っていた。

 
トランスミッションはAMG初となるDTCで、人間業ではとうてい敵わない早業のシフトアップを見せてくれるが、シフトダウンの反応は少し鈍いようだ。
駆動方式はフルタイム4WDしているのではなく通常はフロント2WDであるが、1輪でも滑るとリアが最大50%まで駆動するシステムである。

ステアリングはレザーとアルカンターラのコンビネーションに赤いステッチが施され、モニターやオーディオのコントロールスイッチを備なえている。
シフトレバーはパドルのみで、右がアップ、左がダウンとなる。
ペダルはアルミが標準装着され、ステンレスのフットレストがオプション設定されている。

シートはレカロのバケットタイプで、デザインはもちろんホールド性も素晴らしい。
前後上下、背もたれ角度はもちろんだが、サイドサポートまで両ワキと両モモを電動で締め付けてくれる。
またポジションは3パターンまでメモリーが可能でヒーターまで備える。

エンジンは2.0リッター直4ターボだが、“1機のエンジンを一人のエンジニアが担当する。”というAMGのポリシーに基づいて組み上げられている。
圧縮比8.6で最大ブースト1.8bar時に最高出力360ps/6,000rpm、最大トルク45.9kg-m/2,250-5,000rpmと世界で最もパワフルな量産4気筒エンジンである。
ちなみにA45というネーミングは、この最大トルク45kg-mからきているという説と、AMG生誕45周年記念という二つの説があるそうだ。

サスペンションは通常モデルと同じくフロントがストラットでリアがマルチリンクだが、スプリングやダンパー、ブッシュもAMG専用品に変更されている。
8J-19インチのマッドブラックホイールはエディション1専用品で、ダンロップ スポーツMAXX RT 235/35を履く。
フロントブレーキはAMGマークの入った4ポッドキャリパーに350mmディスク、リアはシングルポッドキャリパーに330mmディスクとなる。
今回の走行ではフェードしてしまったが、パッド交換だけで改善されるだろう。

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Reference:netmania